Nend Community News 2023-9月号 電子版
2023/09/11
今月の言葉
自分を「こういう人だ」と決めないほうがよいかと思います。まずいえば誰もそこに興味がありません。自分を勝手に不自由にするだけです。
───anonymous
トピック『「罰なき社会」―目標を定めよう』
心理学の分野では非常に著名な方であり、行動分析学の創始者であるスキナーは「罰なき社会」ということを述べられています。これは人の行動を変えるにはプラスの感情、すなわち喜びや楽しみ、達成感や幸福感などによるべきであり、そのような社会を目指していきたいという考えです。
子どもに勉強をさせたいとき、私たちは罰を与えることによって子どもを動かそうと考えがちです。叱ったりお小遣いを取り上げたりゲームやスマホの使用を制限したりということは子どもにとって重い罰です。実際に罰は即効性があり、叱られたり脅されたりした子どもはすぐに勉強を始めることでしょう。私たちは罰を与えることが最良ではないと理解はしていますが、確かに効果のある方法であるがゆえにこれに頼りがちになります。
しかし、罰には様々な問題点があり長期的にみると大きな害を及ぼします。具体的には、罰の効果は一時的であること、罰を与えるものがいない場面ではとたんに元の行動に戻ること、不安や不満、怒りといった負の感情が強まることや、これによって攻撃行動が誘発されること、罰への耐性がついて、より強い罰を与えないと効果が得られなくなること、自発的な行動を抑制してしまうことなどです。家庭で子どもにいつも叱ってしまい、叱る行動がエスカレートしてしまうのはこのあたりに原因があります。
罰を与えることによって行動を変えさせることは動物にだって可能です。しかし、動物にはできなくて人間にだけできることがあります。それは『言語による行動の変化』です。「勉強してね」と犬にいくら言っても理解されませんが、子どもは正しく行うことができます。これを学習心理学では『ルール』と呼びます。ルールは命令する言葉だけではなく、忠告や依頼、思い込みや迷信、目標や信念といった言語によるものすべてを含みます。この中で一番効果があるものは「目標」です。子どもが「僕は・わたしはがんばろう」と決めたらこのルールによって子どもたちは自発的に勉強するようになります。そして行動によって得られた達成感が勉強をより楽しいものにしてくれます。目標を定めることは誰にとっても大切だといえます。
目標を決めて行動し、これに賞賛や達成感が付随することが正しい教育でといえます。「罰なき社会」には目標設定とほめることが重要なのです。
「ねんちる」第187段
Mちゃんは数学がすごく得意で、難しい問題でも途中計算もほとんど書かずにさらりと答えを出してくるくらいだったんだけど、反対に英語がとにかく苦手だった。単語を覚えるのに、「vacation」を多くの子が「バカチョン」とローマ字読みをもとに覚えるところを、「ヴイエーシーエーティーアイオーエヌ」と覚えようとするものだからなかなか覚えられない。それでも努力して勉強し、偏差値的には低い地元T高校の福祉科に進学したのち、得意な数学を生かそうと指定校推薦でS工科大学に進学した。
しかし、大学に進学したはいいものの高校では化学基礎を選択していなかったため(高校自体のレベルが低いのも原因)、化学系の必修科目の単位を修得することができず、結局2年留年したあと退学を余儀なくされた。僕も何度も相談に乗ったのだけど、Mちゃんにとってどういう進路がよかったのだろうと今も思う。