進学塾nend

Nend Community News 2023-7月号 電子版

      2023/09/11

今月の言葉

「自由はお金を出しても買えないが、自由を売ってお金に変えることはできる」貧しい人間がまず売りに出すのは自由や尊厳

───魯迅

トピック「なぜ体罰を用いてはいけないか」

私たちは意識する・しないに関わらず、自分にとって好ましい結果が得られることや、嫌なことが避けられる行動を繰り返し選択します。たとえば、勉強することでほめられた子どもは、勉強するという行動が増えていきます。これを「強化」といいます。その強化された行動に伴っていた結果が得られなくなると、強化された行動の頻度は次第に減っていき、通常レベルに落ち着きます。これを「消去」といいます。ほめられることで勉強していた子どもは、ほめられなくなると次第に勉強しなくなります(ほめ続けることも大切ですが、あらたな別の報酬──実際に成績が上がるなど──が得られることで勉強習慣が強化されることが望ましいでしょう)。

「強化」とは反対に、ある行動に好ましくない・嫌な結果が付属する場合、その行動の頻度は抑えられます。これを「弱化」といいます。子どもが年下の弟妹をぶったとき、叱ることでこの行動をとらせないようにするというものです。弱化は一時的に問題行動を抑える効果がありますが、叱り続けないと問題行動の頻度は次第に通常レベルに回復(消去)してしまいます。

体罰は暴力や恫喝によって問題行動を減らそうとするもので弱化にあてはまり、倫理的にも行動分析学の観点からも多くの問題点があります。
まず、体罰は問題行動を一時的に抑える効果しかありません。そのため、問題行動を抑制し続けるために体罰が継続して行われることになります。繰り返し体罰が行われることで耐性がつき、同じ効果を得るためにはより強い体罰が求められます。これが体罰がエスカレートしていく要因です。

また、体罰には積極的に行動をうながす効果はありません。「ちゃんとしなさい」「やる気がない」などあいまいな原因で体罰が行われても、これを受けたものは何をどうしたらいいかわからなくなります。そのため行動が抑制され、積極性を失わせ、抑うつ状態に陥ることになります。さらに、体罰はこれを行うもの、受けるもの双方に暗い負の感情をもたらします。抑圧された感情は他の場所で攻撃的行動を引き起こす恐れがあります。

体罰は即時に問題行動を抑えることから「体罰は効果的だ」と誤った学習をし、これを行うものの行動を強化してしまいます。このため体罰は他の場面でも行使されやすくなります。体罰がいかに危険かわかるでしょう。

「ねんちる」第185段

毎年夏休みは子どもたちの気が緩み、勉強から離れていく時期でもある。思い返してみても、子どもが家を飛び出して行方が分からなくなる事件が起きるのも決まって夏だし、よその子どもがスクールの前で奇声をあげて、ときには花火を打ち込んだりしてくるのも決まって夏だ。小人閑居して不善をなすとはまさにこのことで(小人の意味は違うけれど)、一度勉強から離れてしまった気持ちは元に戻らず、9月から10月にかけてスクールをやめる子が増えるのも毎年のことだ。

夏は冒険の季節でもある。スクールの高校生が2人、ママチャリで名古屋を目指して出発して、箱根を越え、坂道を爆走し、タイヤが外れて大けがをし、野宿をしようとしたら地元の人に拾われ、ご飯とお風呂をいただき、掛川あたりでギブアップして帰ってきた、なんて話を聞くととてもうらやましい。
一度きりの夏はもうすぐ。

 - Nend Community News, 心理・教育