進学塾nend

先生のたまご

   

“僕にはね、広いライ麦の畑やなんかがあってさ、そこで小さな子供たちが、みんなでなんかのゲームをしてるとこが目に見えるんだよ。何千っていう子供たちがいるんだ。そしてあたりには誰もいない。誰もって大人はだよ。僕のほかにはね。で、僕は危ない崖のふちに立ってるんだ。僕のやる仕事はね、誰でも崖から転がり落ちそうになったら、その子をつかまえることなんだ。つまり、子供たちは走ってるときにはどこを通ってるかなんて見やしないだろう。そんなときに僕は、どっからか、さっととび出して行って、その子をつかまえてやらなきゃならないんだ。一日じゅう、それだけをやっていればいいんだな。ライ麦畑のつかまえ役、そういったものに僕はなりたいんだよ。馬鹿げていることは知ってるよ。でも、ほんとになりたいものといったら、それしかないね。馬鹿げていることは知ってるけどさ”

(「ライ麦畑でつかまえて」J・D・サリンジャー)

 

ただいま、新しいスタッフの育成をしています。

もとより将来学校の先生になりたいという人であれば、教員免許を取る課程でさまざまなことを学ぶでしょうが、いわゆる塾のアルバイト(この言い方は好きではないので、うちのスクールについては以後「スタッフ」と呼ばせていただきます)の場合、一からいろいろなことを教えていかなければなりません。

たとえばスクールでは「宿題を出す場合には、必ず答えのついているものを渡すこと」としています。

世にいう先生の中には、子どもたちが答えを丸写しにすることを嫌って、答えがついていないものを渡す人がいます。

しかし、この場合子どもたちは

➀答えがあっているかどうかわからないという不安な状態で宿題を終えなければならないということ

➁答え合わせをして間違っていれば、自分で計算しなおしたり、調べなおしたりするなど、能動的な勉強ができる機会が、その一歩手前で終了してしまうこと

などの弊害があります。また、

➂答えを渡さないということが、子どもたちが答えを丸写しにする行動を防ぐ唯一の解決策ではないこともいえます。

また、宿題については「懲罰的な宿題(=歴史の用語を100回ずつ書かせるなど)を出さないこと」「3日後までにワークを20ページ解いてくるなど限度を超えた量を出さないこと」「宿題を出した場合には必ずチェックをしてあげること」などもあります。

これらは長年この仕事をしていれば当たり前のことですが、初めてのスタッフには一から説明してあげなければなかなか気づきにくいことでもあります。宿題だけでなく、授業や子どもに対するアプローチの仕方、雑談の仕方や笑いの作り方までさまざなことについて不文律があるのです。

この仕事に関しては、いい加減な人間や、しっかりと子どもたちに向き合えない人間、シンパシーを持たない人間には務まりません。奉仕の心(利他の心)と厳しさ(何より自分に対する)と、多分のユーモアを持つ人間でないと務まりませんし、それらがない人間には安心して子どもたちを任せることができません。僕が考えるnendのスタッフというのはただの人間以上の存在です。そういう存在に育て上げるためには、教えこまなければならないことがたくさんあるのです。

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