進学塾nend

Nend Community News 2019-8月号 電子版

      2019/10/08

「今月の言葉」

大人になることがどういうことかを教えてくれるのは大人じゃない。自分より年下の人間だ。

─── 橋本治(小説家)

トピック「自己肯定感を与えて」

私と自分の手は、それこそ生まれたときからの付き合いで、それなりに気に入ってもいたのだが、あるとき手フェチだという女の子に「あなたの手は指が短くてダサいね」と言われた。それまで自分の感情にあわせて握ったり空にかざしたりして、辛いときには石川啄木よろしくじっと眺め続けてきた自分の手が、以来なんとなくみすぼらしく見えるようになってしまった。私はこれを一種の呪いだと考えている。

私たちが子どもに投げかける言葉もこれと同じで、親が何気なくいった一言が、子どもの心に長く影を落とすことがある。「おまえは不器用だ」「何をやってもダメなやつだ」と言われた子どもが、その言葉を打ち消すことができず、自己肯定感が損なわれて、劣等感を抱えてしまう例がある。親は自分が言ったことすら覚えていなくても、その言葉は呪いとなって子どもの心にいつまでも残るのである。実際に「あなたはキャベツ畑で拾ってきた」という定番のジョークを真に受け、自分だけが家族の中で疎外感を感じているといった子がいた。

親が子に与えることができる最上のものは自己肯定感である、といわれている。自己肯定感とは、自分を好きでいられる気持ちであり、自分に誇りを持つことで、その行動に自信を持ち、他人の視線を必要以上に気にしないでいられるということである。

「あなたは良くできる」「優しい子だ」「根性がある」そう言われると、子どもは「全然そんなことない」と謙遜したり、否定したりするだろう。しかし、いつでもそう言われ続けることで、「自分はそうかもしれない」「自分は信じられている」「そうなれるようがんばろう」という気持ちに変わっていくのである。そして、こういう言葉を言い続けてあげられるのは、親以外には誰もいない。

私たちが子どもに与えた自己肯定感は、私たちがいなくなったあともその子を守る楯となる。そして自分が自分を好きでいられるというのは、自分を嫌いになるのに比べればずっとよい。だから親には子どもを否定するのではなく、いつだってほめてあげてほしい。

私の母は私のことをいつも「男前だ」と言ってくれる。あまりにも長くそう言われ続けているので、私は自分が男前であると疑いを持たなくなってしまった。

 

 

トピック「ねんちる」vol.138

非常に悲しいことですが、僕は今までに教え子を3人亡くしています。
浜岳中のHちゃんは僕の初めての年の生徒で、明るくて利発的な子でした。風邪をこじらせて入院し、数日後、肺炎であっけなく亡くなりました。
横内中のガキ大将だったT君は、授業中いつも文句を言いながら問題を解いていました。田村十字路を自転車で走行中、ダンプカーに巻き込まれました。まだ14歳でした。
神田中のS君はヤンキーで、頭は抜群に良いものの、その素行の悪さからオール1の成績をつけられ、高校進学は大変苦労しました。「春から大学生になります。近いうちに遊びに行くね」という電話が最後でした。半年後に別の子から、彼が事故で亡くなったことを聞きました。

病気や事故にはみなさん、くれぐれも注意して下さい。僕の心からのお願いです。

(vol.10より改訂のうえ再掲)

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