進学塾nend

うつくしきもの

      2015/02/27

枕草子に次のようなものがある。

第百四十六段
うつくしきもの 瓜に描きたる児の顔。雀の子の、鼠鳴きするに、躍り来る。二つ三つばかりなる児の、急ぎて這ひ来る道に、いと小さき塵のありけるを目ざとに見つけて、いとをかしげなる指にとらへて、大人などに見せたる、いとうつくし。頭は尼そぎなるなる児の、目に髪の覆へるを、かきはやらで、うち傾きて、物など見たるも、うつくし。大きにはあらぬ殿上児の、装束きたてられて歩くも、うつくし。をかしげなる児の、あからさまに抱きて遊ばしうつくしむほどに、かいつきて寝たる、いとろうたし。(後略)

(訳)
かわいらしいもの。瓜に描いた赤ちゃんの顔。雀の子が、ねずみの鳴きまねをチュウチュウとすると、ひょこひょこやってくるところ。二、三歳ばかりになる子どもが、急いでハイハイしてくる道の途中に、とても小さなゴミのあるのを見つけて、これまたとても小さな指でつまんで、はい、と大人に見せるところなんて、とてもかわいらしい。おかっぱに整えられた子どもが、髪が目にかかるのを手でかき分けたりもせず、顔をかたむけて髪の毛の隙間から物を見ようとするのもかわいらしい。小さなお子さまが、立派な服を着せられて歩いているのもかわいらしい。ちっちゃな子どもをだっこして遊んでいるうちに、疲れてそのまま腕の中で寝てしまうのも、とてもいじらしいものだ。

 

昔から人間というのはかわいいらしいものに心を惹かれるらしく、多くの動物が生まれたての仔のころに、かわいらしい様子をしているのは、捕食者の心を奪うためだと言われている。

授業をしていると子どもたちはとてもかわいらしいもので、理科の授業をしていると「クジラに食べられちゃうと、おなかの中はどうなってるの?」「(哺乳類など恒温動物は体温を維持するために体毛が生えていると説明したあとで)イルカにはどうして毛が生えていないの?がんばれば生えてくるかなぁ」など、想像力がとても豊かでかわいらしい。

そんなこと知らないの?とも言えるけど、僕たちが持っている常識も、いつかどこかで誰かに教えてもらったハズで、彼ら(彼女ら)にとっては、今日がその日だったのかもしれないのだ。

かわいいは正義、とはよく言ったものだ。

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