Nend Community News 2025-10月号 電子版
「今月の短歌」
あきらめた夢のひとつもある方が誰かに優しくなれる気がする
───柳澤真実
トピック「不登校の子どもの支援」
不登校のお子さんの数が増えています。スクールがお預かりするお子さんの通われる中学校でも、各クラスに2~4名の不登校のお子さんがいらっしゃると聞いて驚いています。
不登校の子どもは学校という居場所を喪失していて、後ろめたさを感じています。学校に行けないことで自信を喪失し、親に申し訳ない気持ちから、家庭内での会話もぎこちなくなり、場合によっては家族とのつながりが途切れてしまうことがあります。不登校をこじらせると、家族以外の外部との接触ができなくなる「社会的ひきこもり」、さらには家族ともコミュニケーションがとれなくなる「家庭内ひきこもり」という状態になるおそれがあります。そうならないためにも、家族は子どもの後ろめたい気持ちに寄り添い、「学校に行く・行かないよりもあなたが元気でいてくれることが大事だ」というメッセージを送るとともに、焦らずに待っていてあげることが大切です。親子の距離が離れている場合、どんな支援も介入も効果がなくなってしまいます。
また、不登校の子どもへの介入には副作用もあります。少しでも学校に来られるようにと、「タッチ登校」「放課後登校」「保健室登校」などを(特に学校から)勧められることがありますが、子どもが喜んでいない・帰ってから元気がないなどの場合、続けないほうが賢明です。無理な「約束」をさせることは、子どもの自己肯定感を下げることになります。「今できていること」をほめてあげてください。
家庭でのアプローチでは、「普通の子ども」として接することが大切です。子どもとあいさつや食事、お出かけや雑談(この順に子どもとの仲良し度が高まるといえます)ができるように心がけてください。あいさつできない段階では、まずあいさつができるようにしましょう。子どもが家を「安心できる場所」として捉えられるようになると、少しずつ状況が好転していきます。焦らずに見守ることが一番の近道といえます。
家族の距離が失われている場合は、否定的なことばを使わないように注意してください。「(あなたは)…くらいしたらどう」といわずに「(わたしは)…してくれたらうれしいな」のように、「あなた」を主語にして非難するのではなく、「わたし」を主語に(=Iメッセージ)して子どもの気持ちに寄り添う会話にしてください。
(本記事は、公益財団法人 明治安田こころの健康財団主催で2025/7/27に実施された講座「初学者のための発達障害アラカルト」より、児童精神科医 関正樹先生の講座資料をもとに作成しています)
「ねんちる」第212段
この春高校を卒業したMちゃんが、大学での生活を知らせにきてくれた。高校時代はバイトもせずまじめに勉強に取り組んでいたMちゃんは、今は髪を明るい茶色にして少し大人びた様子。
Mちゃんは小学6年生からお預かりした子で、積極的に前に出る子ではないけれど、いつもにこにこしていて協調性があり、何か頼みごとをすると嫌な顔ひとつせずにきちんと応えてくれる子で、僕と同様ゲームやアニメが好きだからいつも会話がはずんだ。高校生になってもスクールに通い続けてくれてとても高い成績を修めてくれた。指定校で上位私大への進学も可能だったけれど、大学名よりも自分が学びたいことを優先し、心理学で実績のある大学に一般推薦で入学したのもMちゃんらしい。
大学でも変わらずに勉強を頑張ってくれていて、GPA(大学での成績評価)も高水準。この調子でがんばって!