Nend Community News 2025-9月号 電子版
「今月の短歌」
さよならをあなたの声で聞きたくてあなたと出会う必要がある
───枡野浩一
トピック「発達障害の子どもとその支援」
社会的・情緒的な発達が平均的である「定型」とは異なることを「発達障害」といいます。この中でもよく知られるものとしてASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如・多動症)があります。
ASDはこだわりが強く会話がちぐはぐな、社会性が乏しい空気の読めない子のように映ります。ADHDは集中力が続かなく、忘れ物やなくしものをよくする、どこかが抜けている頼りない子として映ります。
発達障害のお子さんが近年増えているとの声がありますが、その理由のひとつに精神疾患や発達障害を判断する世界的な診断基準であるDSMが2013年に改定され、ADHDまたはASDと診断される範囲が広がったことが挙げられます。お母さま方の中には心配になってクリニックを訪れ、実際にお子さんに発達障害との診断を受けた方もいらっしゃるかもしれません。
スクールでも、お母さまからの心配の声をお聞きすることがありますが、発達障害については心配する必要はないと申し上げます。私はこれまでにいろいろなお子さんを預かっていますが、ASDあるいはADHDとみられるお子さんは毎年クラスに一人以上いらっしゃいます。そういったお子さんが孤立したり、問題児としてあつかわれたり、高校を選べなくなったりといったことは一切なく、成長とともに次第に周囲となじんでいき、中学を卒業する頃にはどの子もほとんど健全な発達にみられるようになります。
また、不登校のお子さんが年々増加しています(2024文科省)が、不登校の背景には発達障害が認められることも多いようです(2017 鈴木・岡山ほか)。不登校についても、お母さま方は「このままひきこもりになってしまうのでは」「ふつうの子どもらしい人生を送れないのでは」という不安があるかと思いますが、中学卒業時にこれらのお子さんの85.6%が高校などに進学、20歳時において、81.9%が就学・就業しており(2014文科省)、そのまま引きこもりにいたるケースは少ないといえます。
これらのことを考えますと、お母さまがたには子どもの行動の一つひとつに心配をよせるのではなく、お子さんがどういった特性を持っていて、どのようにしてあげるのがよいか、その対処のしかたを知っておくことが大切だといえます。
「ねんちる」第211段
夏期講習中に大阪からO君が来てくれた。僕が大手の塾で数学の講師をしていたときからの教え子で、かれこれ20年になる。当時中学生のO君は勉強があまりできず、僕が所属していた塾の女性の英語の先生にいつも叱責を受けていた。宿題をやってこない、予告した小テストのために勉強してこないといったことだ。それはすべて英語がわからないことによるのだけど、吃音ぎみのO君が弁解しようと口を開くたび、その英語の先生は激しく怒っていた。僕が塾を立ち上げたときにO君はついてきてくれて、大学入試まで見てあげた。以来、結婚や子どもができたときにこまめに連絡をくれ、子どもの発達について聞きたいと電話をくれる。
今、O君は生涯学習として英会話教室に通っていて、英語が楽しいという。「もっと早くに英語の楽しさや大切さを知っていればなぁ」とO君は残念そうに笑った。