Nend Community News 2025-6月号 電子版
2025/06/09
「今月の短歌」
夢じゃないよねってうれしくなって聞く きみは夢でもうそがへただね
───岡本真帆
トピック「無理だといわずにやってみよう」
テストが近づき、授業で「全教科90点以上取ろう」と言うと何人かの生徒がすぐに「無理」と返してきました。
彼らは今の自分の理解度や90点以上を取るために必要な努力、テストまでの残り日数などいろいろなことを考えた結果、「無理」と判断したわけではありません。まず「無理」が先にあるんですね。自分にはできない。無理だ。頑張ってもしかたない、という思い込みがあるのです。
もちろん、ここには心理的な要因もあります。努力するのは大変なことだし、仮に一生懸命努力をしたのに、結果が変わらなかったらどうしよう。ひどくがっかりするだろうし、それなら最初から無理と言っておいたほうがいい。そう思うのも仕方ありません。
以前にも紹介した『10秒の壁』という話があります。長らく100メートル走で10秒を切ることは人類には不可能だと思われていました。しかし、ある選手が人類史上初めて9秒台のタイムを出すと、それ以降続々と10秒を切る選手が現れたというものです。これは、人類の身体能力が向上したとか、そういう話ではありません。「100メートル走で10秒を切ることはできない」という思い込みが、私たちにその達成を困難にさせていたのです。これが「可能である」ことが多くの人の意識に共有されたことで、達成しやすい土壌を生んだといえるでしょう。
親や兄姉が東大に行っていたり、医者や弁護士だったりする場合、その子どもや弟妹も同じ道に進むことが多いのは、これが理由です。彼らにとって東大に行ったり、医者や弁護士になったりすることは身近にその例がいることで、現実に不可能なことではないと考えることができるからです。
テストで100点を取ったことがある子は、それが不可能なことではないと考えるため、何度も100点を取ります。テストでいつも90点以上を取る子にとっては、「全教科90点以上を目指す」というのが当たり前であって、けっしてこれが無理なこととは考えません。すぐに「無理だ」「できない」という子とは、これほどまでに意識の差があるといえます。
「無理」と言うのが口癖になっている子もいますが、常に「自分ならできる」と考えるほうがよい結果を生みます。自分の可能性を信じることは、自分を好きになること、自己肯定感を上げることにもつながるのです。
「ねんちる」第208段
先週、子どもたちを迎えて車で戻ってくるとスクールの前に保護者の車。誰だろうと思ったらYちゃんとお母さまが顔を見せに来てくれました。
Yちゃんは小学生からお預かりして5年前に卒業した子ですが、当初はわがままで口が悪く、手を焼く子でした。でもわがままなのは寂しさの、口が悪いのは弱気な性格の裏返しと気づきました。中3になって、同じ部活の子と仲たがいをし、そのあと遠回しにYちゃんを揶揄するような声が聞かれたり、避けられたりといった、いじめとはいえないまでも不安定な立場におかれ、第一志望の高校には合格できませんでした。それでも落ち込んだり恨んだりすることなく併願していた私立高校を卒業し、今は看護学校に通って実習の毎日だそう。
もともと泣き虫なYちゃんに看護の道は辛いと思うけど、きっと以前よりも成長してるはず。頑張ってほしいな。