進学塾nend

Nend Community News 2023-2月号 電子版

   

「今月の言葉」

絶対に失敗しないと言いきれることが、自信ではない。 やれることは全部やったと言いきれることが、自信である。

───森博嗣(作家)

トピック「宿題の是非」

小中学生の「宿題」成績向上に効果なし、というセンセーショナルな記事がSNS上に流れてきました。
デューク大学のハリス・クーパー教授の研究として「小中学生の宿題は効果がないので禁止すべき。高校生は2時間以上の宿題は成績を下げる」と報じたものです。おや、と思い調べてみると、あやしい塾を展開する会社を母体にしたバイラルメディア(アクセス数を稼ぐことのみを目的としたメディアのこと)のデマ記事でした。ネット上の情報は鵜呑みにしてはいけませんね。

実際には、教授は適切な量の宿題は効果的であること(適切な量とは、学年×10分を目安とし、小学6年生で60分、中学1年生は70分、最長で高校3年生の120分を限度とする量をいいます)、あまりにも多すぎる宿題や、あまりにも少なすぎる宿題は逆効果になることを示唆しています。
特に小学生について、宿題は特定の科目の成績をただちに向上させるためのものではなく、時間管理や学習技術を身につけるためのものであり、宿題は出すべきであるが、苦労せずにできたと思えるくらいの短さが良いとも述べています。

スクールでは宿題をすることについて、厳格に指導しています。
一つにはクーパー教授の言うとおり、宿題を通してタスク管理、すなわち、計画立てていつ宿題を始め、いつまでに終わらせるかという社会に出てからも必要とされる技術を身につけるためです。宿題提出という、約束事を守る習慣を身につけるためにもとても大切です。

そしてもう一つには、自分はどこまで理解していて、何が不足しているかを把握するという、メタ認知の訓練です。
勉強というのは自分ができないこと、覚えていないことを、覚えてできるようにするということの繰り返しです。「自分ができないことは何だろう」「何を自分は十分に覚えていないだろう」ということが即答できるなら、その子はすでに十分「できている」といっていいでしょう。「何がわからないか、わからない」からこそ、問題を解く必要があるのです。自分が解けない問題、答えられない問題こそ、自分に欠けている部分です。これを自分で把握し、練習して克服することで学力が向上していきます。

宿題はこのように、自己管理能力を身につけることと、自分の弱点の発見とその改善のために必要なのです。

トピック「ねんちる」vol.180

「高校はゴールではない」というのは中学生を指導している私たちの間ではよく言われるけれど、実際にこれを理解してもらうのは難しい。

中堅の、地元では有名な準トップ校に合格して、本人は満足でうれしそうにし、親もスクールに感謝して人生最良の日となった合格発表をピークに、高校ではまったく勉強しなくなってやる気もなく、友だちも少なく、予備校に通う学力すらなくて、いずことも知れぬ進路に進んで音沙汰なくなった生徒を何人も見てきた。I君もそんな一人。

中学3年生で預かったI君は成績も低く、でもどうにか地元の進学校を受けたいと努力し、晴れて合格したときはお祝いに船盛りをさえ頂いたものだ。燃え尽き症候群という言葉があるが、I君はまさにそうだった。30歳を迎えた現在は家から出ることも少ないという。
高校はゴールではない。

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