進学塾nend

Nend Community News 2021-5月号 電子版

   

「今月の言葉」

あなたには親切にしてくれても、ファミレスの店員には不親切な人は本質的には親切な人ではない。

───デイヴ・バリー(米・作家)

トピック「社会科を教える」

ここ最近幕末以降の日本史にはまっています。昨年は高杉晋作ゆかりの地を訪ねて山口県は萩へと行き、コロナ期間中は吉田松陰、渋沢栄一、白洲次郎を読んでいました。退屈な教科といって真っ先に挙げられることが多い社会科ですが、だからこそ教える側の力量が必要だと思います。では社会の先生の力量とはなんでしょうか。

例えば、年号とできごとを並べたチェックリストを渡して「次回までに20個覚えてくること。テストして満点でなければ居残り補習」と伝えてぐいっと圧力をかければ、子どもたちは覚えてくるでしょう。授業すら必要ありません。現にこういうやり方をする塾はいくらでもあります。でもこれは間違っています。社会の先生の力量とは、覚えづらいことをいかに楽に覚えさせてあげられるかに尽きるのです。

具体的な例で言えば、江戸時代中期に国学がおこり、本居宣長によって大成されます。教科書にはこれが天皇を尊ぶ考え(尊王)に結びつき、幕末の尊王攘夷運動に影響を与えたとあります。これを丸暗記させるのではなく、授業では次のように伝えます。

――江戸時代には朱子学(儒教)が奨励されたんだけど、これは大陸から伝わった思想なんだ。じゃあ、日本はなぜ大陸の思想を学ぶのか。日本には日本の風土にあった独自の思想はなかったのか、と考えたのが本居宣長。日本の思想を調べるには日本で一番古い書物にあたるのがいいだろうと考えた彼が見つけのが古事記だったんだ。本居宣長はこれを読んでびっくりした。日本は神々によって作られ、その中の天照大御神の子孫が天皇家として、今も現存している。こんなスケールの大きい話が長らく日本の歴史から消え去っていたというのだ。本居宣長はこれを研究して「古事記伝」に著し国学を大成した。
さて、ここで国学家たちは疑問に思う。日本には偉大な天皇がいて、でも国を治めているのは徳川家の将軍。将軍は本来天皇より任命されるもの。私たちが真に仕えるべきは天皇ではないのか。これが尊王という考えで、幕末に幕府のやり方に不満をもつ人々に支持されたんだ――

単にできごとを暗記するようにと教えるのではなく、子どもたちに印象強く、かつ面白く伝えることが社会の先生の力量です。逆に、勉強する子どもたち側も単なる暗記ではなく、「なぜ、どうして」を感じないことには社会の勉強は身につかないのです。

トピック「ねんちる」vol.159

先日、看護短大に通うMちゃんから久しぶりのライン。
「就職先を決めるエントリーシートを手伝ってほしい。締め切りは明後日」相変わらず無茶な相談。はい、と引き受ける。
Mちゃんは大磯高校に進んで、高校生の間ずっと勉強を見てあげた。そこそこ偏差値の高い高校にもかかわらずMちゃんは勉強が苦手だし、学校の課題プリントはほとんど一人じゃ何もできないから、黒板で説明してあげて、それを写させるしかなかった。付け焼刃の勉強しかしてないのに、甘え上手なMちゃんは学校の先生にも気に入られて高い成績を維持し、T大学の看護に推薦合格した(その志望理由書もエントリーシートも、面接のための問答台本も、全部僕が作らされた)

そんなMちゃんが看護なんてと心配していたけど、意外と順調らしい。世渡り上手なこういう子もいるんだな。

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