春にして君と別れ
2016/06/28
「インディアナ、あきらめなさい」
―――インディ・ジョーンズ/最後の聖戦(1989)より
ここに書くのはためらわれることですが、先月高校時代からの親友Yがなくなりました。
自ら人生に幕を引くという最期を選んだYのことは、僕には悲しいというよりは、むしろ憤りしかありません。
「友人と一緒に過ごした時間は、お互いの人生に共通の思い出を作ることになる」という言葉をどこかで目にしました。
僕とYとは共通の思い出がたくさんあったのですが、その思い出はもう、彼が思い出すことはなくなったのです。
オリンピック・アスリートの為末大さんが、その著書の「諦める力」の中で次のようなことをおっしゃっています。
「私にはこれしかない、努力を続ければ必ずいつか成功できるはず」と考えている人は「一生懸命やったら見返りがある」つまり「犠牲の対価として成功がある」のだと勘違いしている。
(中略)
Aの道を目指していくなら、Bの道は諦めるしかない。目的地への到達と、何かを諦めることはトレードオフなのだ。何一つ諦めないということは立ち止まっているに等しい。
諦めることは大事です。人は何かを手放すことによってしか成長できません。
為末さんは諦めるという言葉の持つネガティブなイメージにとらわれず、諦めるということは自らの選択であると伝えているのです。
Yはロマンチストで、どうしてもかなえたい夢を持っていました。最後の最後までYは自分の夢を諦めることができず、そのためついには自分の人生をすら交換材料にしてしまったのです。僕はわかりません。彼は諦めたのでしょうか。諦めなかったのでしょうか。
大事な友人が一人いなくなったこの世界が、いつもと変わらず退屈な日常にあふれているのはとても不思議なことです。
願わくば、僕のあずかっている子どもたちの未来に希望があらんことを。
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