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Nend Community News 2015-10月号 電子版

      2019/10/08

「今月の言葉」

あなたが19歳の誕生日に見る月の形は、あなたが生まれた日の月の形と同じ。19の倍数なら同じ。

―― ネットの雑学

トピック「アニキと語らう」

先月、とある著名人の方と教育についてお話をする機会を得ました。
その方は、丸尾孝俊さんといいます。若いときに単身インドネシアに渡り、現地で生活しながら、困っている人たちにお金を貸してあげていたら、自分が無一文になっていまいます。すると、現地の人が「お金は返せないけど、よければこの土地をあげるよ」とくれた土地を転売していきなり一億円の大金を手にすることになります。その後、ビジネスを広げ、今ではインドネシアで30社以上を経営する大富豪となっています。アニキと呼ばれる彼の人生を描いた「出稼げば大富豪」は、この春に堤真一主演「神様はバリにいる」として映画化されました。

どうしてその丸尾さんと話をする機会を得たのかは長くなるので省略しますが、僕は率直に次のように質問しました。
「今の子どもたちは、なかなかやる気を持ってくれない。それは彼らが目標を持ちづらい世の中になっているからというのもあるが、どうしたらやる気を持たせられるか」
丸尾さんはこうおっしゃっていました。
「まず、普段の授業で、君は勉強以外のことを話してあげているか」
「今の大人には魅力がないのは確かだろう。子どもたちがあこがれを抱くような、そんな大人になろうとみなが努力すべきだ」
「子どもをここに連れておいで。オレと話したら確実に目を輝かせて帰っていくよ」

期待していた答えは得られなかった。
長年この仕事をしている僕としては、もちろん勉強以外のこと、笑わせたり、人生の大切なことを話したりはしてきている。子どもたちにとって魅力のある大人になるべく努力もしている。丸尾さんのような成功者からすれば、世の中の大人に魅力がないというだろうけど、世の中の大人はみんな頑張っている。僕はそんな言葉をぐっと飲み込んだ。ほろ苦い気分を味わった。

一緒にいた友人とあとでこのことを話し合った。そこでいくつかわかったことがある。自分のこだわりを捨てきれないうちは、きっと変わることがない。教えることひとつ、叱ることひとつにしても、まだまだ考えなければいけないことはたくさんある。僕が丸尾さんの言葉に反感を覚えたのは、自分はもう出来上がっている、自分を変えたくないという気持ちの表れではないだろうか。
確かに丸尾さんにあこがれる子はたくさんいるだろう。しかし全員ではない。サッカー選手やノーベル博士にあこがれる人がいるように。選択肢は多いほうがよい。子どもたちの生き方の手本の一つとして、自分もあこがれてもらえるような、そんな大人になろうと気持ちを新たにした。

トピック「ねんちる」vol.92

今は大学に通うMちゃんが、大学を続けようか、専門学校に入りなおそうかと相談をしにきた。大学では化学を専攻しているのだが、そもそも化学がそれほど得意ではなく、英語も苦手で、勉強がかなり苦しいそうだ。
 Mちゃんは不器用だけれど、地道に頑張るタイプだ。それでも理系の学部はかなり勉強が大変で、なかなか追いついていかないのだろう。Mちゃんは家庭的な子だし、あるいは(管理)栄養士などを目指したほうがよいかもしれない。僕はそうアドバイスした。
 すごくつらいとき、そこで頑張る道と、逃げ出す道がある。人は頑張ることを美徳のようにいうけれど、僕は逃げ出す道を選ぶこともまた、時には大切だと思う。捨てる神あれば拾う神あり。逃げた先には、別の出会いや発見、新しい学びがあるだろう。いつでも逃げるわけにはいかないけれど、いつだって頑張ることだけが正しいわけでもない。Mちゃんには、いい選択をしてほしいな。

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