進学塾nend

311

   

それは午後3時より少し前で、夕方から来る小学生のための授業準備をしていたときだった。
ぐるらるらん、ぐわらるらん、と大きな揺れが伝わってきて、僕はあわててスクールから外に出ようとした。ちょうど自動販売機の商品を補充してくれるお兄さんが来ていて、スクールの入り口で顔を見合わせた。

「大きい…ですよね」
「そうですね…」

外に出て辺りを見渡すと、電線がぐもんぐもんと揺れていて、もともと交通量はそれほど多くない通り沿いなんだけど、それ以外は変わらない日常のような静けさだった。
スクールにはテレビもラジオもないので、スクールの目の前に停めてある車のドアを開け、エンジンをかけてカーナビをテレビに合わせた。あわただしい画面の向こうで、キャスターが今回の地震がいかに大きいものかを告げていた。まだこの時点では、誰も今回の地震が死者18,000人を超える未曾有の大災害になろうとは思ってもいなかった。

あとで子どもたちに聞くと、ある子は校庭にいて、またある子は体育館にいた。ある子は教室に座っていて、ある子は一旦下校していたものの、忘れ物を取りに学校に戻っているところだった。
スクールの休校を決めて、保護者に一斉にメールを送信すると、5時半まで待ってから帰宅することにした。
自宅付近では大規模な停電になっていて、一帯が闇に包まれていた。こんなに夜が暗いと思ったのは、もうずっと子どもだったころ以来だ。懐かしい夜の暗さと星の明るさ。

この日この夜のことは強く印象に残っている。

てんでばらばら、生まれたところも年齢も、職業も収入も考え方も違う僕たち日本人が、同じ心細さといたわりを抱えて、暗い夜のとばりのもとで目を閉じた。本当に大変なのはこれからだった。

 - スタッフブログ